ここまでの記事で、見学に行く動物病院の探し方をお伝えしてきました。
見学に行く動物病院が決まったら、いよいよ見学当日です。
しかし、見学に行くと決まったはいいものの、
こういった不安を抱えている学生・若手獣医師は多いのではないでしょうか?
今回の記事を読めば、
後悔しない見学ができるようになります。
見るべきポイントが明確になり、入職後のミスマッチを防げます。
今は売り手市場の求職者側がめちゃくちゃ有利な状態です。
しっかり動物病院を評価しましょう!
私自身、2回の転職を経験していますが、
新卒の際にも6件、
転職の際にはそれぞれ3件ずつ
動物病院見学に行かせていただきました。
見学件数自体は決して多くはないと思いますが、
どのように比較して、どのように就職先を決定したのか、
私なりのノウハウをお伝えしたいと思います。
ちなみに、偉そうに言っていますが、
最初からしっかりと整理して比較できていたわけではありません。
見学に行くうちに、ポイントを整理していけた感じです。
それでは、具体的に動物病院見学で見るべきポイントを見ていきましょう!
動物病院見学で見るべきポイント12選
| ポイント | 見るべきポイント | 質問例 |
| 「チーム医療」は機能しているか? | 1 スタッフ間のコミュニケーション | ・「現場のスタッフ間で、どのように情報共有をされていますか?」 ・「情報共有に使用しているツールは何ですか?」 |
| 2 ミーティング | ・「朝礼・終礼の雰囲気がとても良かったと感じました。いつもあのような雰囲気でやられているのですか?」 ・「症例検討会などの学術的なミーティングは、どのくらいの頻度で、どのような形式で行われていますか?」 | |
| 3 飼い主対応 | ・「飼い主様対応で心掛けていることは何でしょうか?」 | |
| 「学び」と「成長」の機会はあるか? | 4 教育体制 | ・「入職後の教育プログラムについて、具体的に教えていただけますか?」 ・「去年の学会やセミナーへの参加された方はいますか?どの学会ですか?」 ・「仮に自分が入社した場合、いつ頃から参加可能ですか?」 ・「学会やセミナーへの参加は、費用補助などの支援がありますか?」 |
| 5 症例の多様性 | ・「〇〇の症例は、平均何例(1日、1週間、1ヶ月あたり)来ますか?」 ・「〇〇の手術は、平均何例(1日、1週間、1ヶ月あたり)ありますか?」 ・「〇〇科の専門診療へは、遠くからだとどこの地域から来院されていますか?」 ・「〇〇科の専門診療の予約は、平均どれくらい埋まっていますか?」 | |
| 6 設備活用 | ・「この設備は、誰が主に取り扱っているのですか?」 ・「この設備は、実際どれくらいの頻度で使用されていますか?」 ・「この設備は、いつ頃導入したものですか?」 ・「この設備は、今後買い替えの予定はありますか?」 ・「この設備を導入するきっかけはなんでしたか?」 ・「新しい設備を導入する予定はありますか?」 | |
| 「働く環境」は健康的か? | 7 労働時間と休憩 | ・「一日の診療の流れと、平均的な退勤時間を教えていただけますか?」 ・「昼休憩は、平均どれくらい取れていますか?」 ・「昼休憩中は、外出が許されていますか?」 |
| 8 職場の雰囲気 | ・「スタッフ同士の仲はどうですか?トラブルはありませんか?」 ・「スタッフ同士、プライベートで食事に行ったり、遊びに行ったりすることはありますか?」 ・「スタッフの誕生日には、お祝いをしていますか?」 ・「この職場で働いていて良かった!と思える点はどこですか?」 ・「院内イベントにはどういったものがありますか?また、参加率はどれくらいですか?」 | |
| 9 院内の清潔さ | ・「院内清掃のルールはありますか?」 ・「院内清掃で気をつけている点・意識している点はありますか?」 ・「院内清掃はどれくらいの頻度でどなたが行っていますか?」 ・「院内清掃を、外注していますか?」 | |
| 「待遇」は適切か? | 10 給与 | ・「(聞けそうなら)失礼ですが、先生の今の給与はどれくらいでしょうか?」 ・「(聞けそうなら)先生は、今の給与に満足されていますか?」 ・「昇給は年何回で、何を基準に決定されていますか?」 ・「賞与は年何回で、何を基準に決定されていますか?」 |
| 11 福利厚生 | ・「福利厚生は、ホームページの求人情報通りでしょうか?」 ・「勤務中の怪我に対して、労災が適用された事例はありますか?」 ・「健康診断はありますか?」 | |
| 12 休日 | ・「有給休暇の平均取得日数は、獣医師・看護師それぞれ年間どのくらいですか?」 ・「長期休暇はありますか?」 ・「給与は固定残業代が含まれていますか? また、残業手当はどのように申請・支給されますか?」 ・「産休・育休を取得されたスタッフの方がいましたら、教えてください」 |
「チーム医療」は機能しているか?

見るべきポイント1 スタッフ間のコミュニケーション
- 獣医師同士だけでなく、動物看護師や受付スタッフが連携しているか
- 敬語やタメ口
- 指示の出し方
などに注目します。
また、見学当日が忙しければ、よりラッキーです。
忙しい時にこそ、スタッフの本気の連携が見れたり、余裕がなくなった時のスタッフの態度もよくわかってくると思います。
<質問例>
- 「現場のスタッフ間で、どのように情報共有をされていますか?」
- 「情報共有に使用しているツールは何ですか?」
見るべきポイント2 ミーティング
- 朝礼や終礼、症例検討会など、チームで情報を共有する場があるか、
- 朝礼・終礼の雰囲気はどうか、
などに注目します。
朝礼や終礼などでは、
きちんと形式的に行われているかどうかに加えて、
スタッフが自発的に発言できる雰囲気であるかどうか、
実際に発言やディスカッションがなされているかどうか、
にも注目しましょう。
また、症例検討会のような、
院内の興味深い症例や、ヒヤリハット症例などを共有する場
があるかどうかはとても大切です。
このような取り組みをしている病院は、常にレベルアップを目指す活発な動物病院であることが多いと思います。ぜひ確認してみましょう。
<質問例>
- 「朝礼・終礼の雰囲気がとても良かったと感じました。いつもあのような雰囲気でやられているのですか?」
- 「症例検討会などの学術的なミーティングは、どのくらいの頻度で、どのような形式で行われていますか?」
見るべきポイント3 飼い主対応
- 獣医師・看護師の説明がわかりやすいか、
- 飼い主へ寄り添った接し方をしているか、
- 飼い主との距離感(裏での飼い主への発言も重要)
- 電話対応の仕方
などに注目しましょう。
これらの態度は、その病院の色を表していると言っていいほど重要だと思います。
飼い主・動物ファーストでない動物病院は、どこか暗い雰囲気を感じます。
心から飼い主や動物を大切にしているかどうかは、見学していると良くわかります。
どちらかというと、質問するのが難しいポイントですので、よく観察してみましょう。
<質問例>
- 「飼い主様対応で心掛けていることは何でしょうか?」
「学び」と「成長」の機会はあるか?

見るべきポイント4 教育体制
- 新卒・若手向けの教育プログラムや、OJT(実務訓練)がどのように行われているか
- セミナー・学会への参加・発表・補助実績はあるか・あるなら上限額はどうか
などに注目しましょう。
教育プログラムに関しては、大きな動物病院以外は整っていない場合も多いと思います。
その場合には、指導医について確認し、その指導医の人柄が自分に合いそうかどうかを確認してみましょう。
個人的には、動物病院の教育プログラムはそこまできっちりしていなくてもいいのではないかと思っています。
そのため、きっちりしている・していないで判断するのではなく、
自分が教育を受ける上で、成長できそうな環境かどうかをよく観察しましょう。
また、セミナー・学会に関しては、
自分が極めたい分野について学ぶ上で、とても大切になると思います。
また、学会・セミナーへの参加実績は、そのまま病院のモチベーションにもつながってくると感じていますので、
スタッフのモチベーション判断にも役立ててください。
<質問例>
- 「入職後の教育プログラムについて、具体的に教えていただけますか?」
- 「去年の学会やセミナーへの参加された方はいますか?どの学会ですか?」
- 「仮に自分が入社した場合、いつ頃から学会などへ参加可能ですか?」
- 「学会やセミナーへの参加は、費用補助などの支援がありますか?」
見るべきポイント5 症例の多様性
- どのような病気・症例を多く扱っているか
- HPに記載の専門科目は、実際にどれくらい診療されているか
などに注目しましょう。
動物病院選びの段階で、すでにリサーチしている場合が多いと思います。
また、「この病気・症例が見たい!」という理由で、動物病院を選んだ方も多いのではないでしょうか?
その場合には、本当に目的の病気・症例が来院しているのかどうかを確認しましょう。
働き始めたら、全然勉強できない!なんてことにならないよう、
ここはしっかりと質問しておいた方がいいと思います。
<質問例>
- 「〇〇の症例は、平均何例(1日、1週間、1ヶ月あたり)来ますか?」
- 「〇〇の手術は、平均何例(1日、1週間、1ヶ月あたり)ありますか?」
- 「〇〇科の専門診療へは、遠くからだとどこの地域から来院されていますか?」
- 「〇〇科の専門診療の予約は、平均どれくらい埋まっていますか?」
見るべきポイント6 設備活用
- HPに載っている設備が、実際にどのくらいの頻度で使用されているか
- 誰が使っているか
- 使い方をレクチャーしてくれる人がいるか
などに注目しましょう。
設備をもとに動物病院を探した方は、特に詳しく質問して確認しましょう。
エコー・レントゲン・血液検査機器などの一般的な設備はもちろんのこと、
眼科用スリットランプ・眼圧計・CT・MRI・消化管内視鏡・腹腔鏡・胸腔鏡・硬性鏡・整形外科器具・X線透視装置・人工呼吸器・体外循環装置などなどの特殊な器具に関しても、
お金をかけて入れたものの、あまり使用していないなんてこともたまにあります。
設備にこだわりがない方でも、使い方がマスターできれば成長できるような設備もあり、
今後のキャリアアップのためにも把握しておいて損はないでしょう。
<質問例>
- 「この設備は、誰が主に取り扱っているのですか?」
- 「この設備は、実際どれくらいの頻度で使用されていますか?」
- 「この設備は、いつ頃導入したものですか?」
- 「この設備は、今後買い替えの予定はありますか?」
- 「この設備を導入するきっかけはなんでしたか?」
- 「新しい設備を導入する予定はありますか?」
「働く環境」は健康的か?

見るべきポイント7 労働時間と休憩
- スタッフが何時頃に出退勤しているか
- 拘束時間はどのくらいか
- 昼休憩はしっかりと取れているか
- 休憩室の環境はどうか
などに注目しましょう。
働く環境を知る上で、労働時間と休憩は最も基本的な要素です。
もちろん、早く帰ることだけが大切なわけではありません。
しかし、最低限の日常生活を担保するためにも、しっかり見ておいてください。
動物病院業界は、「やりがい搾取」が未だに横行している業界です。
動物病院によっては、そういったことが当たり前のこととして残っています。
これらは、各動物病院の文化になってしまっているので、中で働いているスタッフは、そのおかしさに気づいていません。
しっかり質問して、皆さんの思う常識に当てはまっているかどうか、確認しておきましょう。
また、昼休憩をする場所の環境も、結構重要ですよね。
などなど、それぞれのこだわり項目があれば、よく見ておきましょう。
<質問例>
- 「一日の診療の流れと、平均的な退勤時間を教えていただけますか?」
- 「昼休憩は、平均どれくらい取れていますか?」
- 「昼休憩中は、外出が許されていますか?」
見るべきポイント8 職場の雰囲気
- スタッフの表情は明るいか
- 疲弊していないか
- スタッフ同士の仲は悪くないか
- 病院スタッフのイベントはあるか
などに注目しましょう。
職場の雰囲気は、質問されれば「良いよ!」と答えられるに決まっています。
自分の職場をわざわざ悪く言うスタッフはいません。(居たとしたら、その動物病院はかなり劣悪な環境だと思います)
そのため、自分で判断する必要があります。
一応、いくつか質問をぶつけて、反応を見てみましょう。
その反応からわかることもあるかもしれませんので。
<質問例>
- 「スタッフ同士の仲はどうですか?トラブルはありませんか?」
- 「スタッフ同士、プライベートで食事に行ったり、遊びに行ったりすることはありますか?」
- 「スタッフの誕生日には、お祝いをしていますか?」
- 「この職場で働いていて良かった!と思える点はどこですか?」
- 「院内イベントにはどういったものがありますか?また、参加率はどれくらいですか?」
見るべきポイント9 院内の清潔さ
- 院内にゴミが落ちていないか
- 落ちているゴミを、すぐに拾っているか
- 診察台は綺麗に保たれているか
- 使ったものを、元の場所に戻しているか
などに注目しましょう。
5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の精神が行き届いているかの確認になります。
忙しい中で、全てを完璧に行うことは難しいですが、
スタッフ1人1人の意識が高い場合には、
ゴミや汚れが少なく、すぐに片付けたり掃除したりするため、
院内が綺麗に保たれています。
これも質問するようなことではないかもしれませんが、質問して意識の確認をしてみてもいいかもしれません。
くれぐれも、きつい質問にならないよう気をつけましょう。
<質問例>
- 「院内清掃のルールはありますか?」
- 「院内清掃で気をつけている点・意識している点はありますか?」
- 「院内清掃はどれくらいの頻度でどなたが行っていますか?」
- 「院内清掃を、外注していますか?」
「待遇」は適切か?

見るべきポイント10 給与
- 勤務しているスタッフの給与は、自分の理想と合っているか
- 昇給の基準は適切か
- 賞与は支払われているか
などに注目しましょう。
給与については、獣医師によっては全く気にしていない人もいます。
しかし、どんなキャリアを描いていくにせよ、お金はあって困るものではありません。
「自分の実力に見合っていないのでは?」
などと感じずに、貰えるところで貰っておきましょう。
お金に心配がなくなることで、
例えばもう一度勉強するために研修医になりたい(薄給で…)となった場合にも、
迷うことなく進むことができます。
動物病院のスタッフには、しっかりとした給与を貰う権利が十分にあると確信しています。
妥協せずにいきましょう。
ただし、はっきりとは聞きづらい、または答えてくれない場合もありますので、
聞き方に注意しましょう。
<質問例>
- 「(聞けそうなら)失礼ですが、先生の今の給与はどれくらいでしょうか?」
- 「(聞けそうなら)先生は、今の給与に満足されていますか?」
- 「昇給は年何回で、何を基準に決定されていますか?」
- 「賞与は年何回で、何を基準に決定されていますか?」
見るべきポイント11 福利厚生
- 求人情報の記載内容に嘘はないか
- 社会保険の加入状況
- 労災保険の適用実績はあるか
- 健康診断は行われているか
などに注目しましょう。
個人経営の動物病院の場合には、きっちり福利厚生が規定されていない場合もあります。
求人情報が更新されていない場合もあります。
しっかりと質問して、確認しておきましょう。
<質問例>
- 「福利厚生は、ホームページの求人情報通りでしょうか?」
- 「勤務中の怪我に対して、労災が適用された事例はありますか?」
- 「健康診断はありますか?」
見るべきポイント12 休日
- 有給休暇の取得状況は適切か
- 連休・長期休暇が取れるか
- 残業手当はしっかりと支給されているか?
- 産休・育休などの実績
などに注目しましょう。
有給休暇も、動物病院によってはあまり取れない場合もあります。
ほとんど長期休暇がない場合もありますので、その辺りの実情を聞いておきましょう。
また、子供に対する理解があるかどうかも、とても重要です。
今後の人生のことを考えて、男女問わず、子育てに向いているかどうかも、きっちり確認しておきましょう。
<質問例>
- 「有給休暇の平均取得日数は、獣医師・看護師それぞれ年間どのくらいですか?」
- 「長期休暇はありますか?」
- 「給与は固定残業代が含まれていますか? また、残業手当はどのように申請・支給されますか?」
- 「産休・育休を取得されたスタッフの方がいましたら、教えてください」
まとめ
以上、動物病院見学で見るべきポイント12選
として、見学の際にどこに注目すべきかをまとめてみました。
これらのポイントに関して、ご自身で表を作るなどしてまとめておくことで、
動物病院同士の比較にも利用できると考えています。
特にたくさんの動物病院に見学に行かれる場合には、
- 「どうやって比較したらいいんだろう?」
- 「最初の方にいった動物病院、どんな感じだったかもう忘れちゃったよ…」
など、悩まれている方も多いと思います。
本記事の12のポイントを参考にして、
動物病院同士の比較に利用してみてはいかがでしょうか?
ちょっと見るところ多いよ!と言う方は、
ご自身が重要視するポイントのみに絞って比較するのもありだと思います。
また、これらのポイントをしっかり活かすために1番重要なのは、
見学に行ったその日のうちに、動物病院についてのまとめをしておく
と言うことです。
本記事を参考にすることもお勧めしますが、
ご自身と動物病院スタッフのお時間を有意義なものにするためにも、
何より見学に「行きっぱなし」にしないようにしましょう。
それではまたお会いしましょう!


コメント