今回は、若手獣医師ダイアリーと題して、
私の今までの獣医師人生での体験を言葉にしてみようと思います。
今回のテーマは、
忘れられない「ありがとう」
です。
獣医師をやっていると、辛いことも多く経験すると思います。
特に若手のうちは、困難の連続です。
- 先輩からは、「なんでこんなこともできないんだ」と怒られ
- 看護師さんからは、「こんなことも知らないんですか?」と言われ
- 飼い主さんからは、「あの若い先生は頼りないから、別の先生に変えてほしい」と言われ
- 病気の動物はものすごいスピードで亡くなっていき、「死」に立ち会うこともすごく多い
最初はものすごくしんどい思いをしました。
動物が好きで、助けたいという気持ちで獣医師になったのに、
気持ちが沈む時は、いつも人から何か言われて沈む。
そんな日々を過ごしていました。
そんな獣医師2年目のある日、
自分が担当していた症例が、亡くなってしまいました。
高齢の犬でしたが、腫瘍を抱えており、手術で摘出したものの、予後は非常に悪いと判断していました。
飼い主さんは、すごくその子を大切にしており、いろいろな治療を施してきていました。
しかし、いよいよ手のつけようがない状態になってしまい、
このまま今の治療を続けるか、ご自宅でのターミナルケアに切り替えるか、
決断を迫られました。
飼い主さんとよくお話しした結果、最期はご自宅で過ごさせてあげることを優先しました。
その決断から数日後に、その子は息を引き取りました。
後日飼い主さんが挨拶に来られました。
「最期、家族全員が揃っている中で、息を引き取ることができました。先生のおかげで、良い最期を迎えることができました。ありがとう。」
と仰っていただきました。
獣医師の先輩方からすると、ありきたりな話かもしれませんが、
私にとっては今でも忘れられない大切な言葉です。
ただ、当時の決断が正しかったのかどうか、正直未だに答えを出せずにおります。
「もう少し治療を続けていたら、もっと長生きできたかも」
という思いもあります。
何が正しいかはわかりません。そもそも答えのない問題ではあります。
しかし、ご家族の皆さんが満足していただけること、これを叶えることが獣医師の1番大切な職務だと、改めて実感しました。
また、獣医師の発言次第で、どんな治療方針にも進ませることが出来るということも感じ、より一層知識と技術を身につけ、最善の策を提案できるようにならないといけないと、再確認しました。
後日談として、
この飼い主さんが新しい子を迎えて、動物病院に連れてきてくれた時には、涙が出るほど嬉しかったです。
きっと、
このような何事にも変え難い経験が、何よりのやりがいにつながり、
辛いこと、苦しいことも乗り越えていける。
それが獣医師という生き物なんだろうなと思います。
若手獣医師の皆さんも、辛い日々を乗り越え、真摯に診察に取り組んでいれば、必ずこういった経験ができると思います。
獣医師を続けている人なら、必ず経験していることと思います。
辛いことばかりに目を向けず、できているところに目を向けて、
諦めずに頑張りましょう!
今後も時々こういった日記的な内容を入れていこうと思います。
獣医師を続けていく上で、少しでも皆さんの背中を後押しできたら嬉しいです。
肩の力を抜いてお付き合いください。
それではまたお会いしましょう!


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